換価分割

換価分割を行う4つのメリット

換価分割を行うと、具体的にどのようなメリットがあるのか

 

①相続人が多いときでも公平に遺産分割できる

換価分割を行う1つ目のメリットは、相続人の人数が多いときでも、公平に遺産分割がしやすくなる

換価分割を行う場合、売却後に得た現金を、法定相続分に応じて分配するのが一般的です(分割割合は自由に決められます)。

この際、売却で得た現金を1円単位で各相続人に分配できるため、どんなに相続人の人数が多くても、公平に遺産分割することができるのです。

また、換価分割であれば、相続税額の計算もそう面倒ではありません。

メリット

 

②自己資金を準備する必要がない

換価分割を行う2つ目のメリットは、自己資金を準備する必要がない点です

公平性を重視する遺産分割方法であれば、代償分割という選択肢もあります。

しかし前章でもご紹介した通り、代償分割を選択した場合、相続財産を取得する相続人が自己資金で「代償金」を準備する必要があります。

換価分割であれば代償金を準備する必要がないため、自己資金の有無を問われることもありません。

メリット

 

③相続税の納税資金を捻出できる

換価分割を行う3つ目のメリットは、相続税の納税資金を捻出できる

相続税は納付期限(相続開始日の翌日から10ヶ月以内)に、現金一括で納税するのが原則です(クレジットカード払いもあります)。

しかし、被相続人の相続財産の多くが不動産などで預貯金が少なく、相続人に納税資金もない場合、延納や物納などを検討する必要があります。

延納を選択する場合は要件を満たす必要があり、利子税も発生しますし、手続きの手間もかかります(詳しくはコチラをご覧ください)。

物納は一定の条件を満たさないと認めてもらえないため、現実的ではありません。

換価分割を行うことで不動産等を売却することで、相続税の納税資金を捻出できれば延納や物納を検討する必要はありません。

メリット

 

④相続税の節税になる可能性

換価分割を行う4つ目のメリットは、相続税の節税になる可能性がある点です

この理由は、不動産(土地)には5種類の公的価格が設定されており、不動産売買の基準となる価格よりも、相続税評価額の方が低いためです。

相続税評価額は、土地であれば通常の売却時の価格の8割程度、建物であれば通常の売却時の価格の7割程度が目安となります。

「換価分割をするなら相続発生前に売却しておいた方が楽なのに…」と思われるかもしれませんが、相続税の節税を重視するのであれば、相続発生後に不動産を売却するのが正解です。

 

換価分割を行う3つのデメリット

換価分割を行うメリットは多いですが、いくつかデメリットもあります。

 

①希望額で売れない可能性

換価分割を行う1つ目のデメリットは、希望額で売れない可能性があることです

特に相続税の納税資金の捻出を考えて換価分割を選択した場合などは、相続人は「早く売却したい」と考えるものです。

しかし、不動産は売却を急ぐと希望額を下回ることも多く、景気動向によって土地の価額が一時的に下がっていることも考えられます。

売却を急いでいないケースではデメリットにはなりませんが、価格相場や景気動向などを鑑みた上で総合的に判断しないと、希望額で売れない可能性があることは覚えておいた方が良いでしょう。

デメリット

 

②売却による手数料などがかかる

換価分割を行う2つ目のデメリットは、売却による手数料などがかかる点です

特に不動産を換価分割する場合、仲介する不動産会社に支払う手数料だけではなく、印紙代・測量費用・境界確定費用などが発生します。

 

③譲渡所得税が課税される可能性

換価分割を行う3つ目のデメリットは、譲渡所得税が課税される可能性があることです

この譲渡所得税とは、不動産を売却した代金から、取得費や譲渡費用を差し引いて算出された「売却益」に対して課税される税金のことです。

なお、取得費とは不動産の取得にかかった費用と設備費や改良費を加えたもののことを指し、譲渡費用とは不動産を売るために要した費用を指します。

譲渡所得税が課税されると住民税も増額されるため、高額な税金が発生する場合がありますので注意が必要です。

 

換価分割をした場合の手続きの方法

換価分割を選択した場合における、相続手続きの方法は以下の通りです。

 

1.換価分割する財産の価値を調べる

まずは換価分割する相続財産を決め、その相続財産の価値を調べてください

不動産であれば登記簿謄本などを元に権利関係を確認し、相続税評価額を算出してください。

土地は路線価方式や倍率方式を用いて相続税評価額の計算を行い、自己利用の建物であれば固定資産税評価額が相続税評価額となります。

またこの際に、不動産の実勢価格(売却する際の価格)を知るために、不動産会社に査定を依頼されると良いでしょう。

 

2.遺産分割協議を行う

次に、換価分割する相続財産を含む、被相続人の遺産の全てについて、相続人全員で「遺産分割協議」を行います

遺産分割協議とは「誰が・何を・どれだけ相続するのか」を決める話合いのことで、原則「相続税の申告期限(相続発生日の翌日から10ヶ月以内)」までに終わらせておく必要があります。

なお、遺産分割協議において、相続人の誰か1人でも換価分割に反対する場合は、話合いがまとまるまで次のステップには移れませんのでご注意ください。

そして遺産分割協議で決定した内容は、遺産分割協議書に記載することとなります。

遺産分割協議書は様々な相続手続きで提出を求められる書類であり、「言った言わない」などの相続トラブルを回避するためにも、証拠として書面に残しておく必要があります。

 

3.相続登記をする

次に、遺産分割協議書に記載された情報を元に、不動産の相続登記を行います。

この際、相続登記は「共同名義(共同登記)」にするのか「代表者名義(単独登記))」にするのかを決め、その詳細を遺産分割協議書に書き残しておく必要があります

共同登記とは「相続人全員で不動産を共有した状態の登記」のことで、単独登記とは「特定の相続人が代表者として登記」することを指します。

単独登記を選択すると特定の相続人が代表者となるため、スムーズに売却しやすいというメリットがあります。

しかし単独登記をする場合、売却代金を他の相続人と分割する際に「贈与」とみなされないために、遺産分割協議書に予め細かい規定を記載することが重要となります

 

4.売却方針を決める

次に、換価分割する相続人全員で、その資産の売却方針を決めます

この理由は、実際に売却契約を締結した後には、引き返すことができないためです。

換価分割するのが不動産であれば、以下のような売却方針を決めると良いでしょう。

  • 最低売却額
  • いつまでに売却するのか
  • どの不動産仲介業者に依頼するのか

特に相続税の納税資金を捻出したい方は、売却期限を決めておかないと、あっという間に相続税の納税期限が来てしまいますのでご留意ください。

 

5.売買契約を締結して売買代金を受領

相続財産の買主が見つかり次第で、売買契約を締結し、売買代金を受領します。

先述した通り、売却契約の締結後は取り消しができませんので、よく考えた上で売買契約を締結してください。

なお、売買代金の受け取りについては、相続人の手持ちの財産と混ざると混乱が生じてしまいますので、相続専用の銀行口座を準備されることをおすすめします。

 

6.売却代金を分配

最後に、相続財産の売却金から諸経費を差し引き、遺産分割協議書に記載された割合で分配を行います

法定相続分で分配するのが一般的ですが、相続人全員が合意をしていれば、割合を自由に決めることができます。

この分配割合についても、予め遺産分割協議書に記載しておく必要があります。

 

7.換価分割における遺産分割協議書の書き方

換価分割における遺産分割協議書の記載内容は、次のようになります。

まずは被相続人の氏名・本籍・生年月日・死亡年月日・最後に住んでいた住所などの情報を書き込み、遺産分割に同意した旨を記入します。

続いて、換価分割する財産の詳細を記載し、そこから諸経費を除いた金額を、相続人の人数分で分割相続することを書き入れます(単独登記か共有登記かも記入しましょう)。

遺産分割協議書を相続人分作成し、それぞれが署名捺印して、1通ずつ所持することを記します。

最後に、相続人それぞれの住所と氏名を署名して署名日を記入し捺印します。

換価分割における遺産分割協議書は、「換価目的である旨」と「売却代金の分割率」を記入しておくことが必須となりますのでご注意ください

 

8.換価分割における税務(相続税・譲渡所得税・贈与税)

換価分割を選択して遺産分割をした場合、どのような税金が課税されるのでしょうか?

この章では、換価分割を選択した場合の相続税・譲渡所得税・贈与税について解説します。

 

8-1.相続税

換価分割を選択して遺産分割をした場合であっても、「課税遺産総額」が「相続税の基礎控除額」を超える場合には相続税が課税されます

「課税遺産総額」とは、換価分割をする財産だけではなく、預貯金や有価証券などのプラスの財産から、借金や未払い金などのマイナスの財産を差し引いた総額のことを指します。

なお、生命保険金や死亡退職金などは、受取人が決まっているため遺産分割の対象にはなりませんが、プラスの財産として課税遺産総額に計上する必要があります。

そして「相続税の基礎控除額」とは、【3,000万円+(法定相続人の人数×600万円)】で算出された金額のことを指します。

相続税が課税される場合、相続税の申告期限までに申告書類を管轄の税務署に提出する義務がありますので、失念しないようご注意ください。

8-2.譲渡所得税

換価分割を選択して不動産などを分割した場合、譲渡所得税が課税される可能性があります。

譲渡所得税とは、譲渡価額から取得費や譲渡費用を差し引いて算出した、「譲渡所得」に対して課税される税金のことです。

例えば、被相続人の相続財産が不動産のみ、相続人は母・長男・次男の3人、相続財産である不動産に母と次男が住んでいると仮定しましょう。

この不動産を長男と次男の2人で相続する場合は遺産分割をしなければなりませんが、次男には代償金を支払う能力がないため換価分割を選択し、遺産分割協議書に「長男Aが不動産を1人で相続してから登記し、その後売却して取得したお金を二人で半分ずつ分割することとする(単独登記)」と記載したとしましょう。

長男が1人で相続した不動産が1億円で売却されたとすると、長男と次男の取得分は5,000万円ずつとなります。

ところが、不動産を売却して収益が生まれた場合、譲渡所得が発生する可能性があるのです

1億円で売れた不動産に対して、取得費と譲渡費用の合計が7,000万円だとすると、3,000万円の売却益が生まれます(兄弟2人だと1,500万円ずつ)。

これだけの譲渡所得があると、翌年2月16日~3月15日の間に、確定申告をして譲渡所得税を納税しなくてはなりません

しかし、換価分割を選択して売却益が出た場合は、相続人によって譲渡所得税がかからないケースと、譲渡所得税がかかるケースがありますのでご注意ください。

 

8-2-1.譲渡所得税がかからないケース

換価分割をして売却益が生まれた場合でも、譲渡所得税がかからないケースがあります

この理由は、特別控除(控除額3,000万円)を適用できるためです。

特別控除は、被相続人が1人で住んでいた住居だけではなく、居住用財産を譲渡した場合にも適用できます。

次男Bは、売却した不動産において被相続人と同居していたため、売却不動産が次男にとっての居住地になります。

次男の譲渡所得は1,500万円で、特別控除の控除額3,000万円を下回るため、譲渡所得税は課税されないのです。

8-2-2.譲渡所得税がかかるケース

換価分割をして売却益が生まれた場合でも、特別控除が適用できれば譲渡所得税は課税されません。

しかし、長男は、換価分割によって取得する不動産が居住地ではないため、長男の取得した譲渡所得1,500万円には譲渡所得税が課せられます。

譲渡所得税の計算方法は、以下の通り2種類あります

○長期譲渡所得…譲渡した年の1月1日現在で、5年超の期間不動産を所有していた場合(長期譲渡所得の場合は、所得税15%、住民税5%です)

○短期譲渡所得…譲渡した年の1月1日現在で、5年以内の期間不動産を所有していた場合(短期譲渡所得の場合は、所得税30%、住民税9%です)

 

8-3.贈与税

これまでに見てきた例でいくと、一度長男が不動産を相続して単独名義で登記・売却した後に、次男に財産(売却後の現金)が渡されていますから、これが贈与にあたらないのか疑問に思う人もいるでしょう。

しかし、国税庁ホームページにおいて、以下のように明快な答えが用意されています。

【引用:遺産の換価分割のための相続登記と贈与税

つまり、換価分割をした場合、ケースによっては相続税や譲渡所得税が課税されますが、換価代金を分配する際に贈与税が課税されることはありません

ただし遺産分割協議書に「換価目的である旨」と「売却代金の分割率」をしっかり記入しておくことが必須となりますので失念しないようご注意ください。

 

まとめ

換価分割は、相続人が相続財産の保有を希望せず、相続人同士で均等に相続財産を分割したい場合に選択される遺産分割方法です。

しかし、換価分割を選択する前にデメリットを把握し、遺産分割協議書に「換価分割をする旨」や「売却代金の分割率」等を漏れなく記入しておくことが重要です

また、換価分割で不動産を売却した場合、相続税が課税されるケースと課税されないケースがあり、仮に売却益が出れば譲渡所得税が課税されるケースと課税されないケースがあります。

換価分割を検討されている方は、必ず相続に強い各種専門家に相談されることをおすすめします。

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